キビャックの正体を学ぶ
キビャックは、海鳥を主原料とする珍しいお漬け物です。
- 様々な呼称
キビヤック、キビャック、キビヤク、キビヤ、キビア。
英文表記:kiviak,giviak,kiviaq,qiviok- 生産地域
アラスカ、グリーンランドのイヌイットの生活域。
- 使用原材料
アザラシ(seal)、
海鳥(アパリアス、auks,dovekie,murres)。- 作製方法
-
アザラシから、皮下脂肪を残して肉・内臓を除去。
得られたアザラシ生皮に、羽根付アパリアス(数百羽)を詰め込む。(アパリアスは一晩冷却させたものを使用)
開口部をアザラシの腸製糸できつく縫い閉じる。
ウジ発生防止のために、縫い目にプヤ(アザラシの油脂)を塗布。
地面に小石を敷き、鳥詰アザラシを仰向けに安置する。
上から大きな石で二重三重に被覆する。
(漬け物石、動物避け、日射温度管理の機能)
そのまま約二ヶ月間、熟成させる。
- 食事方法
-
通常の食法~半冷凍状態で~
発酵により弛んだ羽根を除去して、肛門に口を付け体液をすする。
首筋あたりにガブと食いつく。
そのまま皮をずるずる剥ぎながら口にふくむ。
心臓部の血塊を味わう。
肉、内臓を賞味する。
頭蓋骨を砕き脳を吸引する。
翼、背骨、骨盤をガムのように咀嚼して余韻を楽しむ。
特別な食法~引き立て役~
アパリアスの体液を他の肉料理(加熱済み)に滴下する。
(主として、加熱により損なわれた貴重なビタミンを補う目的)
- 味・食感
部位により異なるが、概ね、
匂いは「塩辛」・「くさや」、味は「ブルーチーズ」・「ヨーグルト」に似るとされる。
舌がヒリヒリするような刺激のある食感だという。- 旬の季節
-
保存食のため、年間を通じて食べることが可能。
作成期間は、アパリアスの飛来する五月中下旬。加えて猟期制限あり。 - 生活との関係
-
イヌイットの食生活の中では最高の位置を占める食べ物である。
新年、クリスマス、感謝祭、成人式等の祝宴の場に不可欠。
賓客の饗応に用いられ、困惑させてしまうケースもみられる。 - その他特記事項
-
状態の悪いキビャックによる食中毒死の事例あり。
(探検家クヌート・ラスムッセンKnud Rasmussenも54歳でキビヤに没す
。)アザラシ脂肪の浸透したものほど美味とされる。
抱卵メスのキビャックに巡り会う幸運もある。これは最も美味といわれる。
材料のアパリアスは個体数が減少傾向にあり、厳しい猟期制限あり。
手指に付着した臭いは、石鹸洗浄しても数日間残存するので注意を要す。
土中熟成法による食品はキビャックに限られず、アザラシ単体もしくはアパリアス単体で熟成された発酵肉も存在する。